生産技術実話シリーズ 第11話

なぜ富士フイルムは世界最先端の生産技術を次々と生み出すことができたのか──その答えは「技術を資産に変える経営」にあった

私は以前から、一つの疑問を持っていました。

なぜ富士フイルムは、世界最先端の生産技術を次々と開発し続けることができたのでしょうか。

研究開発費が豊富だったからでしょうか。

会社の規模が大きかったからでしょうか。

もちろん、それらも理由の一つでしょう。

しかし、私は本当の理由は別のところにあったと考えています。


富士フイルムは技術を「売る会社」でもあった

富士フイルムは、自社で開発した生産技術を、自社工場で実用化するだけではありませんでした。

その技術を世界中の写真フィルムメーカーへ提供し、

技術ライセンス契約

を締結していたのです。

つまり、

技術そのものが商品だったのです。


技術開発費はロイヤリティで回収する

新しい生産技術を開発するには、

膨大な人材、

時間、

設備、

実験費用が必要になります。

普通の企業では、

これらはすべてコストになります。

しかし富士フイルムでは違いました。

開発した技術を世界へライセンス供与することで、

継続的にロイヤリティ収入を得ていたのです。

つまり、

技術開発費は、技術ライセンス収入によって回収される仕組み

になっていました。


技術が、次の技術を生み出す

ロイヤリティ収入は、

単なる利益ではありません。

それは、

次の研究開発費となり、

次の設備投資となり、

さらに新しい技術開発へとつながっていきます。

つまり、

技術が技術を育てる好循環

が出来上がっていたのです。


生産技術は利益を生む資産である

一般には、

生産技術部門は、

利益を生まない間接部門と考えられがちです。

しかし、

富士フイルムでは違いました。

生産技術は、

品質を向上させ、

歩留まりを改善し、

生産性を高めるだけでなく、

会社へ直接利益をもたらす経営資産

でもあったのです。

私は法務部輸出管理室に在籍していた頃、この技術ライセンス契約に関わる業務を担当しました。

その契約から得られるロイヤリティ収入は、年間約2億円に達し、それが20年以上にわたり会社へ継続的な収益をもたらしました。

私はこの経験から、

生産技術はコストではなく、利益を生み出す知的財産である

ことを実感しました。


技術を守るだけでは十分ではない

もちろん、

企業秘密として技術を守ることは重要です。

しかし、

それだけでは企業は成長できません。

技術を知的財産として管理し、

必要に応じてライセンスという形で活用することによって、

企業価値はさらに高まります。

これも、

世界企業が実践してきた重要な経営戦略の一つです。


生産技術者への教訓

世界一の技術は、世界中で使われて初めて本当の価値を持つ。

生産技術は、

工場の中だけに存在するものではありません。

企業の競争力となり、

知的財産となり、

世界へ広がることで、

企業の未来を支える資産になります。

私は、「生産技術力鑑定」においても、

設備だけでなく、

その企業が持つ生産技術をどのように知的財産として活用しているか

という視点を重要な評価項目の一つにしたいと考えています。

企業の本当の強さとは、

技術を開発する力だけではありません。

その技術を社会の価値へ変え、継続的な利益を生み出す仕組みを持つこと。

そこにこそ、世界企業の条件があると私は考えています。