[解説] 輸出管理:法規制と通関手続き

ーーー日本から海外へ「化学物質、化学薬品、原材料素材、微生物、酵素等」を輸出する際の法規制及び義務付けられている通関手続きについて解説するーーー

日本から海外へ「化学物質」「化学薬品」「原材料素材」「微生物」「酵素」などを輸出する際には、以下のように複数の法制度と規制が関係しており、出荷前に、安全保障貿易管理、化学物質規制、動植物防疫、通関制度などを十分に理解しておくことが必要である。

【1】安全保障貿易管理:外国為替及び外国貿易法(外為法)

根拠法:外国為替及び外国貿易法(外為法)
 輸出品が兵器や大量破壊兵器などの開発等に転用される懸念がある場合、経済産業大臣の許可が必要である。

対象物品
 化学兵器関連物質(化学兵器禁止条約(CWC)該当物質)
 毒性の高い化学薬品・中間体
 微生物(バイオセーフティーレベルBSL2以上)
 酵素(特定の軍事転用可能な活性型酵素など)
 高純度原材料(フッ素化合物、リン、ホスゲン等)

関連リスト
 輸出貿易管理令別表1(リスト規制):該非判定が必要
 キャッチオール規制:リストにない物品でも用途や需要者によって許可が必要

実務対応
 該非判定書の作成(自社または技術士等の第三者による作成)
 需要者確認(用途・エンドユーザーが懸念先ではないか)
 経産省への輸出許可申請(NACCS経由) (必要な場合)

【2】化学物質規制:化審法・毒劇法・消防法等

■(1)化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)
 環境残留性がある化学物質(例:PCB、PFOS)などの輸出には届出・制限がある。
 新規化学物質の海外輸出時には事前届け出が必要(化審法第5条)

■(2)毒物及び劇物取締法(毒劇法)
 毒物・劇物の輸出には製造・販売登録者の資格と輸出時の適正表示が必要。

■(3)消防法・労働安全衛生法
 引火性・爆発性の高い化学品には、輸送容器・保管方法の基準がある。

【3】バイオ関連規制:感染症法・カルタヘナ法

■感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)
 微生物・細菌・ウイルス等の輸出には、感染症分類(I~IV類)に応じた許可が必要。

■カルタヘナ法(遺伝子組換え生物等の規制)
 遺伝子組換え微生物・酵素などの輸出には、環境への影響評価および農水省・環境省等への事前申請が必要。

【4】関税法・輸出入取引法による通関手続き

■通関制度(関税法/税関)

輸出通関では、NACCS(通関電子システム)による以下の手続きが必要である。

【5】各国の輸入国側規制との整合

輸出相手国が独自に持つ以下の制度にも注意:
 ・REACH規制(EU):登録義務あり
 ・TSCA(米国):輸入前の届出
 ・中国:危険化学品登記制度
 ・IATA規制:航空輸送時の危険物ラベリング規定

【6】その他:国際条約に基づく規制

・CWC(化学兵器禁止条約)
・ワッセナーアレンジメント
・バイオセーフティ条約
・PIC条約(有害化学物質の事前情報同意制度) など

【7】まとめ:輸出時の主なチェックリスト

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