少額特例適用運用マニュアル(外為法 安全保障貿易輸出管理)
— 企業輸出管理責任者のための実務運用基準 —
■ 1. はじめに ― 少額特例は「簡便措置」ではなく「例外運用」ー
少額特例(少額包括許可・少額輸出扱い)は、「輸出許可手続き負担の軽減」を目的とした制度ではありません。
本制度は、リスト規制品であっても、安全保障リスクが十分に低い場合に限り、例外的に輸出許可を不要とできる制度です。
つまり、少額特例は“特権”ではなく“例外的免除措置”です。誤った適用は、重大な違反を招く可能性があります。
そのため、企業内では以下の方針が必須です。
■ 2. 少額特例の法的位置付け
少額特例は、外為法および輸出令において、
(A)包括許可制度における少額包括の適用条件
(B)キャッチオール規制運用通知における少額案件扱い
(C)特定輸出スキームにおける金額要件による例外措置
として存在します。
重要:条文単独ではなく、告示・通達・Q&A・事例集を併読して判断する必要があります。
■ 3. 少額特例適用判断の原則
少額特例の判断は、以下4要素のすべてが問題なく成立する場合にのみ許されます。
| 判断項目 | 必須確認内容 |
|---|---|
| ① 品目 | リスト規制該当性・除外品目該当性 |
| ② 仕向地 | 制裁国、リスク国、有志国分類 |
| ③ 需要者 | 軍需組織・研究機関・転売リスク |
| ④ 用途 | 軍事利用リスク、暗号化用途、AI・量子・半導体用途 |
金額基準は“一条件”であり、判断の中心ではありません。
■ 4. 企業内少額特例運用ルール標準モデル(STG社推奨)
1.該非判定書が存在し、最新法規に基づくものか確認
2.少額特例適用理由書を作成(営業判断では不可)
3.同一需要者年間累積金額管理(製品別・用途別に管理)
4.用途確認書・契約条項に少額特例適用条文を義務化
5.輸出後フォロー監査を年次で実施
「価格だけ」で判断する運用は管理者として失格です。
■ 5. 重大違反事例(実務再現)
| 事例 | 誤りの本質 |
|---|---|
| 修理品返却を少額扱いし許可不要と判断 → 後に暗号化セキュリティ機能付きPLCと判明 | 「修理=非規制」という誤認 |
| 測定器本体は許可取得、付属ケーブルのみ少額扱い | 「部品は低リスク」という思い込み |
| 同一海外代理店経由の別最終ユーザ案件を別需要者扱い | 「需要者同一性の誤判定」 |
■ 6. これまで実際に少額特例で輸出された典型貨物例(企業内ヒアリング・経産省審査傾向整理)
| 分野 | 具体例 | リスク理由 |
|---|---|---|
| 半導体 | ICバーンインソケット、検査治具、測定基板、小型FPGA評価ボード | 研究用途・小ロット試験 |
| 産業機器 | サーボモータ制御用センサ、PLC拡張モジュール、産業ロボット予備基盤 | 定期補修部品・フィールド保守 |
| 理化学機器 | 比重計チューブ、熱分析測定セル、吸収セル、標準液 | 高額本体の付属品扱い |
| 医療・画像 | 光学ズーム制御回路、撮像DAQ基板、ラインセンサユニット | 医療機器更新時の補修 |
| 航空宇宙 | チタン固定具、検査ジグ、軌道設計用算術モジュール(研究利用) | 民生用途での研究要件 |
| 通信・暗号 | OpenVPN対応ルーターの旧型保守部品、署名認証モジュール | 要注意:除外品目あり |
■ 7. STG社が提供する特例運用支援
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 少額特例適用可否判定 | 企業案件に対し審査形式で回答 |
| 判定書・証跡作成支援 | 監査対象仕様に合わせた記録設計 |
| 実例データベース提供 | 業界別・貨物別・用途別ナレッジ共有 |
| 現場教育 | 「営業禁止判断基準」「例外禁止ルール」講習 |
| CP企業申請支援 | 経産省登録を見据えた組織モデル設計 |
■ 8. 結び ― AI任せではなく、管理責任者の判断能力が問われる ー
AIや検索サイトは制度要件を提示しますが、
出荷対象が「輸出して良い貨物かどうか」の判断は、
AIではなく、“輸出管理責任者の判断能力”に依存します。
STG社は、企業の輸出管理を「負担」ではなく、
企業価値と信用を守る“経営資源”へ変える支援を行います。
■ お問い合わせ
Tel:03-5731-2382
Email:nakamura@saburai.com

