ポンプ・バルブ・撹拌機等の該非判定書作成マニュアル

ポンプ・バルブ・撹拌機などの流体機器は、典型的な民生用途で使われる一方で
、
安全保障貿易管理(外為法)・キャッチオール規制の対象と
なり得る重要な機器群です。
本ページでは、該非判定書作成の実務ステップと、
キャッチオール規制(用途要件・需要者要件)への対応の考え方
を、分かり易く解説します。
1. なぜポンプ・バルブ・撹拌機に該非判定が必要なのか
近年、製造設備・流体制御機器に対する安全保障輸出管理の 重要性が世界的に高まっています。 ポンプ・バルブ・撹拌機などは、通常は民生用途で使用されますが、 設計仕様や使用条件によっては軍事転用性を有し、 大量破壊兵器(WMD)や関連装置の一部として利用されるリス クもあります。
- 腐食性化学物質の移送・制御に用いられる高耐食ポンプ・バルブ
- 高精度な流量・圧力制御を行う特殊ポンプ
- 化学反応槽・混合槽向けの高トルク撹拌機
これらの機器は、輸出令別表第一に基づくリスト規制のみな らず、 キャッチオール規制(用途要件・需要者要件)の観点からも 慎重な判定が求められます。
2. ポンプ・バルブ・撹拌機の該非判定・該非判定書作成の基本ステップ
STEP 1:製品仕様情報の整理
まずは、評価対象となる機器ごとに、次のような技術情報を整理します。
- 最大使用圧力・温度
- 材質(例:ステンレス、ハステロイ、モネル、チタンなど)
- 耐食・耐薬品性の有無(どの薬品に対してか)
- 流量・容量・吐出圧、トルクなどの性能パラメータ
- シール構造(メカニカルシール、磁気カップリングなど)
- 用途(化学・医薬・半導体・食品・研究開発設備など)
- 制御方式(手動、電動、空気圧、PLC/IOTによる遠隔制御など)
ここでのポイントは、輸出先国よりも製品の「性能・構造」そのもの が、 リスト規制・キャッチオール規制の判断基準になるという点です。
STEP 2:輸出令別表第一との照合(リスト規制の有無確認)
次に、整理した仕様情報をもとに、輸出令別表第一の各項目と照合していきます 。 ポンプ・バルブ・撹拌機に関連し得る代表的な項目例は以下の通りです。
| 分類項目(例) | 該当可能性のある機器例 |
|---|---|
| 2項(核関連) | 核燃料・核関連設備向け特殊ポンプ/バルブ |
| 3項(化学兵器関連) | 腐食性化学物質・毒性物質の移送・制御に用いる高耐食ポンプ/バルブ |
| 9項(ミサイル等関連) | 特定ロケット燃料・推進剤などの混合・供給に用いる撹拌機・ポンプ |
いずれにも該当しない場合でも、それだけで「安全」ではない 点に要注意です。 次のSTEP 3で説明するキャッチオール規制
STEP 3:キャッチオール規制(用途要件・需要者要件)の確認
リスト規制に該当しない機器であっても、用途要件・需要者要件 に該当する場合、 キャッチオール規制の対象となり、許可が必要となるケースがあります。
用途要件(何に使われるか)
次のような用途に関与する場合は、用途要件に該当する可能性があります。
- 大量破壊兵器(核・化学・生物兵器)や、その運搬手段に関連する設備・装 置の製造・開発・使用
- 軍事用途向けの特定設備ラインへの組み込み
- 特定国向けの軍需工場・研究所への納入 など
需要者要件(誰が使うのか)
下記のような需要者に対しては、特に慎重な確認が必要です。
- 懸念国に所在する公的機関・軍関連組織・国防関連企業
- 制裁対象リスト(国連・各国政府等)に掲載されている企業・団体・個人
- 実態が不明瞭なペーパーカンパニー、仲介業者 など
【キャッチオール規制の判定フローの例】:
輸出令別表第一との照合
├─ 該当あり → リスト規制として判定・許可申請へ
└─ 該当なし → キャッチオール規制の用途要件・需要者要件を確認
├─ 要件に該当 → キャッチオール規制対象(許可検討)
└─ 要件に非該当 → 非該当。ただし判定プロセスを証跡として保存
特に、PLCやIoT機能、遠隔監視・制御機能を備えたポンプ・バルブ・撹拌機の場 合、 暗号化通信や遠隔制御が、軍事用途やWMD関連設備に転用されるリスク を考慮し、 用途要件・需要者要件の確認をより慎重に行うことが推奨されます。 ただし、これらは「16項該当」ではなく、キャッチオール規制の観点から確認 すべきポイントであることに注意が必要です。
STEP 4:該非判定書の作成と証跡保存
最後に、判定結果を該非判定書(パラメータシート・項目別対比表等) として文書化し、 関連資料とともに保管します。
- 判定の結論(該当/非該当)
- 根拠となる条文・パラメータ・判定ロジック
- 製品仕様書・カタログ・図面などの技術資料
- 用途確認・需要者確認(キャッチオール)の記録
- 判定担当者・承認者・判定日
- 保管期間(原則5年以上の保管を推奨)
3. よくある誤解・トラブル事例
| よくあるケース | 問題点・リスク |
|---|---|
| 「民生用途だから問題ない」と判断している | キャッチオール規制(用途・需要者)の観点が抜け落ち、 後から取 引停止・調査対象となるリスク |
| PLC搭載・遠隔監視機能付き機器を「16項該当」と誤認 | 本来は用途要件・需要者要件の確認が中心であるにもかかわらず、 誤った分類により社内運用が複雑化・混乱 |
| 海外顧客から要求されるECCNだけを確認している | 日本の外為法に基づく該非判定が行われず、 税関・監督官庁からの 指摘や出荷停止につながる恐れ |
| 部門ごとに独自フォーマットで判定書を作成 | 全社としての統一基準がなく、監査対応・是正の手戻りが多発 |
4. Saburai Technologists(STG)が提供する支援メニュー
STGは、ポンプ・バルブ・撹拌機などの流体機器を含む、装置・機器の該非 判定・輸出管理体制構築を専門とする技術コンサルティングチームです。
- 該非判定書作成支援
・外為法に基づく該非判定
・技術 パラメータの整理と条文照合
・キャッチオール規制(用途要件・需要者要件)のチ ェック - 技術レビュー・ヒアリング
・設計者・技術者とのインタビ ュー
・仕様書・図面のレビュー - 社内ルール・CP(コンプライアンス・プログラム)の整備支援
・輸出管理規程・社内フローの設計
・CP登録企業を目指した体制構 築支援 - 教育・研修プログラム
・輸出管理担当者向け実務セミナー
・技術者向け技術パラメータ理解セッション
・オンライン研修にも対応
5. 導入企業様の声(例)
「それまで属人的だった該非判定が、手順とロジックが明確な社内標 準プロセスになりました。
化学プラント向け装置メーカー 輸出管理ご担当者様
ポンプやバルブなどの機械設備についても、営業・技術・管理が同じ目線で判 断できるようになりました。」
「海外顧客から該非判定書や技術説明書の提出を求められるケースが増えてい ますが、
流体制御機器メーカー 営業部長様
STGのサポートで日本法・海外法の両面から整合性のある説明ができ るようになり、商談の信頼度が高まりました。」
6. まとめ:輸出管理は企業価値を高める経営戦略
ポンプ・バルブ・撹拌機などの流体機器についての該非判定と該非判定 書の整備は、 罰則回避のためだけの「守りの仕事」ではなく、 企業の信頼性・国際競争力・サプライチェーンの強靭性を高 めるための重要な経営課題です。
- 外為法・キャッチオール規制に適切に対応している企業は、海外パートナー からの信頼が高い
- 案件ごとの判断が体系化されることで、社内の意思決定が迅速になる
- 輸出管理のレベルアップは、「輸出管理は企業価値を向上させる戦略的手段 」という経営メッセージにもつながる
STGは、単なる「書類作成代行」にとどまらず、貴社内部に輸出管理の仕組み と人材を育てることを重視しています。
7. 無料相談・お問い合わせのご案内
「どこから手をつければよいか分からない」「既存の該非判定書が正しいか確認
したい」
「ポンプ・バルブ・撹拌機など特定機種について相談したい」
といったお悩みがございましたら、まずはお気軽にSTGまでお問い合わせくださ
い。
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応について、
Saburai Technologists(STG)が貴社の状況に合わせてご提案いたします。

