[提言] 外為法冤罪事件の結審に思う ー 技術士の立場から ー

2024年末、いわゆる大川原化工機事件が無罪確定となり結審しました。

一企業が外為法違反の嫌疑で摘発され、経営者は長期間勾留、会社は事件に巻き込まれ、事業活動に甚大な被害を受けることになりました。しかし結審までの経緯を通じて、私は一技術士として、この事件の根本的な問題点が何一つ解決されていないことに深い憂慮を抱いています。

本件は、スプレードライヤーという極めて汎用的な粉体装置が、化学兵器製造に転用可能と誤認されたことに端を発しています。装置の輸出は民生用途を前提に適切な管理が行われており、企業側も事前に経産省へ相談を重ねていたとされています。それにもかかわらず、警察当局は技術的判断を十分にせず捜査に踏み切り、検察も起訴を強行しました。最終的に裁判所はリスト規制非該当と判断し無罪としましたが、既に企業は大きな犠牲を払っていました。

この事件は、安全保障貿易管理における該非判断刑事司法の現場における技術理解不足という、日本の制度の接点に存在する構造的な歪みを露呈したものです。

私たち技術士は、科学的・技術的判断の専門家として、以下のような再発防止の提言を発信していく責務があると考えます。

【提言】

1.該非判定の第三者認証制度の創設

→ 技術士など有資格者による客観的で信頼性ある該非判定の公式な枠組みが必要です。

2.行政と捜査の役割分担と連携の明確化

→ 経産省の事前相談制度の判断を尊重し、これを刑事摘発の防波堤とする制度的整備を。

3.捜査当局における技術リテラシーの向上と外部顧問制度の導入

→ 科学的専門性が要求される案件には、外部の技術顧問(技術士等)の参画を義務化する制度設計が望まれます。

4.中小企業の輸出管理支援体制の強化

→ 技術と法令の橋渡しを行う技術士の全国的ネットワーク活用を制度化し、相談体制を強化する必要があります。

[投稿者:中村博昭(技術士・化学部門/サブラヒ・テクノロジスツ)]

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